"治療院のLINE自動返信をAIで作る方法(予約・問い合わせ・営業時間外)"
この記事の結論(3行)
- 治療院のLINEは「予約」「定型の問い合わせ」「体調や経過の相談」に分けて、AIに任せるのは前の2つだけにします。
- いきなり全自動にせず、「AIが下書き→人が確認して送る」から始め、安全だと分かった型だけを自動送信に切り替えます。
- 体調不良・急な変化・医療相談に近い内容は、必ず人が見る。患者さんの氏名や症状をそのまま外部のAIに入れない。この2点が設計の土台です。
治療院のLINEに届くメッセージは3種類に分けられる
整体院・整骨院のLINE公式アカウントには、毎日いろいろなメッセージが届きます。AIを入れる前に、まず中身を分けてみてください。多くの院では、次の3種類に収まります。
- ① 予約・変更・キャンセル(例:「明日の午後空いていますか」「予約を来週にずらしたい」/AIに任せてよいか:任せやすい(ただし確定操作は人か予約システム))
- ② 定型の問い合わせ(例:営業時間、場所、駐車場、持ち物、支払い方法、初回の流れ/AIに任せてよいか:最も任せやすい)
- ③ 体調・経過の相談(例:「施術後に痛みが強くなった」「この症状でも行っていいか」/AIに任せてよいか:任せない。必ず人が返す)
「全部AIに任せる」が危ない理由
LINE自動返信のツール紹介記事では、「24時間AIが対応」「スタッフの返信ゼロ」といった表現をよく見かけます。治療院では、そのまま真似しないほうが安全です。理由は3つあります。
- 体調の相談が混ざる。予約のメッセージの中に「腰が昨日から急に痛くて」と一言入っていることがあります。予約だけ処理して、体調の一言を見落とすのが一番怖いパターンです。
- 効果の表現を誤りやすい。「1回で良くなりますか」と聞かれたとき、AIは親切心から「改善が期待できます」と書きがちです。治療院が効果を断定する表現は避けるべきで、自動送信にすると止める人がいません。
- 予約の二重受付。AIが「空いています」と返しても、予約表と連携していなければ、別の経路で埋まっていることがあります。
AI自動返信を作る5つのステップ
ステップ1:過去のLINEを分類する
まず過去1〜2か月分のメッセージを見返し、上の①②③のどれに当たるかを数えます。正確な集計でなくて構いません。「②の営業時間と駐車場の質問が多い」「③は少ないが、来ると重い」など、院ごとの傾向がつかめれば十分です。
このとき、分類作業そのものをAIに手伝わせる場合は、氏名・電話番号・症状の詳細を消してから貼り付けます(後述の「個人情報の扱い」を参照)。
ステップ2:「AIが返す」「人に回す」の線を引く
次に、ルールを表にします。これがAI自動返信の設計図になります。
- 営業時間・定休日・場所・駐車場・持ち物・支払い方法(対応:AIが回答(自動送信の候補))
- 初回の流れ・所要時間の目安(対応:AIが回答(院が決めた文面の範囲で))
- 予約の空き確認・変更・キャンセル(対応:AIが受付し、確定は人または予約システム)
- 料金の質問(対応:院の公式の案内文だけを返す。値引き交渉には答えない)
- 施術後の痛み・体調不良・急な変化(対応:AIは答えない。受付の返事だけして人に回す)
- 「この症状は治りますか」等の効果の質問(対応:AIは答えない。人に回す)
- 病院に行くべきか迷う内容(対応:人がすぐ確認。必要に応じて医療機関の受診を案内)
- クレーム・返金の相談(対応:人に回す)
ステップ3:AIに渡す「院の正しい情報」をまとめる
AIは、渡された情報が間違っていれば間違った答えを返します。最初に、次の内容を1枚の文書にまとめてください。
- 院名、住所、最寄り駅、駐車場の有無と台数
- 営業時間、定休日、臨時休業の連絡方法
- 予約の方法(LINE・電話・予約システム)と、変更・キャンセルのルール
- 初回の流れ、持ち物、服装
- 支払い方法
- 料金を聞かれたときの案内文(金額を載せるかどうかは院の方針で決める)
- 答えてはいけないこと(効果の断定、診断、施術の可否の判断)
ステップ4:「AIが下書き→人が確認して送る」で回す
最初の段階では、AIが作った返信をそのまま送りません。スタッフが確認して、必要なら直して送ります。
この段階で見るのは、次の3点です。
- 事実の間違い(営業時間、場所、予約ルール)
- 言い過ぎ(効果を約束する表現、断定)
- 見落とし(予約の文の中に体調の一言が入っていないか)
ステップ5:安全だと分かった型だけ自動送信にする
しばらく運用して、「この種類の質問はほぼ直さずに送れている」と分かったものから、自動送信に切り替えます。目安は②の定型の問い合わせです。①の予約は、予約システムとつながっていない限り「受付の返事」までにとどめます。③は自動化しません。
道具の選び方
LINE自動返信の作り方は、大きく分けて3つあります。
- LINE公式アカウントの標準機能:応答時間の設定や、キーワードに反応する応答メッセージがあります。営業時間外の定型文だけなら、これで足ります。
- Messaging APIと生成AIをつなぐ:届いた文章をAIが読み、下書きや返信を作ります。ルール表どおりに振り分ける、といった細かい設計ができます。
- LINE連携の外部ツール:顧客管理(CRM)やステップ配信とあわせて使うもの。すでに使っているツールがあれば、その中のAI機能から試すのも手です。
営業時間外の返信をどう作るか
営業時間外は、AIの効果を感じやすい場面です。ただし、夜に届くメッセージには体調の相談が混ざりやすい点に注意します。
営業時間外の自動返信は、次の3要素を入れておくと安心です。
- 受け付けたことと、いつ返事をするか
- 予約の変更・キャンセルなら、何を書いてほしいか
- 急な体調の変化があれば、院の返事を待たずに医療機関に相談してほしいこと
メッセージありがとうございます。ただいま営業時間外のため、翌営業日の【時刻】以降に順番にお返事します。
ご予約の変更・キャンセルの場合は、お名前(カタカナ)とご希望の日時をお送りください。
急に強い痛みが出た、しびれや発熱があるなど体調に不安がある場合は、院からの返事を待たずに医療機関にご相談ください。
コピペで使えるプロンプト
LINE返信の下書き用(システムプロンプト)
AIツールの「指示」や「システムプロンプト」の欄に貼り、【 】を自院の内容に書き換えて使います。
あなたは【院名】(整体院)のLINE受付担当です。届いたメッセージに対する返信の「下書き」を作ります。下書きはスタッフが確認してから送ります。
院の情報(これ以外の情報で答えない)
- 営業時間:【例:平日10:00〜20:00、土日10:00〜17:00】
- 定休日:【例:水曜】
- 場所:【住所・最寄り駅】
- 駐車場:【有無・台数】
- 予約方法:【LINE・電話・予約システムURL】
- 変更・キャンセル:【ルール】
- 初回の流れ・持ち物:【内容】
- 料金の案内:【案内文。金額を書かない場合は「ご来院時にご案内します」など】
ルール
- 最初に、メッセージを次のどれかに分類して【分類】として1行目に書く。
A=予約・変更・キャンセル / B=定型の問い合わせ / C=体調・経過・効果の相談 / D=クレーム・その他
- CとDの場合は、返信本文を作らず「担当者が確認してご連絡します」という受付の文だけを書き、2行目に【要対応:人】と書く。
- AとBに体調の一言(痛み、しびれ、発熱、急な変化など)が少しでも含まれる場合も、【要対応:人】と書く。
- 効果や改善を約束する表現(治る、良くなる、改善する、必ず等)は使わない。
- 予約の空きを断定しない。「確認してご連絡します」と書く。
- 院の情報にないことは推測で書かず「確認してご連絡します」と書く。
- 文体はです・ます。3〜5文。絵文字は使わない。
過去のLINEを分類するプロンプト
以下は整体院に届いたLINEメッセージです(氏名・連絡先・症状の詳細は削除済み)。
1件ずつ、A=予約・変更・キャンセル / B=定型の問い合わせ / C=体調・経過・効果の相談 / D=その他 に分類し、
最後に、Bの中で多い質問を上位5つ、AIの定型回答にできそうな順に並べてください。
判断に迷ったものは「迷い」として理由を1行で書いてください。
【ここにメッセージを貼る】
個人情報の扱い:患者さんのLINEをAIに入れるときの注意
治療院のLINEには、氏名、電話番号、症状、通院歴といった情報が入っています。症状や病歴は、個人情報保護法で「要配慮個人情報」として特に慎重な扱いが求められる種類の情報です。
AIを使う前に、最低限次のことを決めておきます。
- 一般向けのAIチャットに、患者さんの氏名・連絡先・症状をそのまま貼らない。分類や文面づくりの練習には、個人が分からない形に直したものを使います。
- 使うAIサービスの設定を確認する。入力内容が学習に使われるかどうか、データの保存先や保存期間を確認し、必要なら法人向けの契約や設定を選びます。
- 自動返信の中で症状に触れない。AIの返信が症状を復唱すると、誤送信のときの影響が大きくなります。
- プライバシーポリシーに書く。LINEの問い合わせ対応にAIを使う場合は、その旨と目的を院のプライバシーポリシーに記載します。
整体院を経営しながらAIを入れている立場から
PROSTの代表 小川葵は、名古屋・覚王山の整体院「やわらぎ」の取締役も務めています。やわらぎでは2026年7月に、患者さんから届く食事写真や体重表へのLINE返信をAI化する設計を行いました。
設計の考え方は、この記事で書いた順番そのものです。
- まずAIが下書きを作り、人が確認して送る形から始める
- 安全な内容だけを、段階的に自動化する
- 体調不良、急な体重の変化、医療相談に近い内容は、必ず人が確認する
- 本人の許可がない写真や体験談は使わない
現場で感じるのは、AIの文章の上手さよりも、「どこから先を人が見るか」を先に決めることのほうが大事だということです。線引きが決まっていれば、スタッフも安心してAIの下書きを使えます。
よくある質問
Q1. LINE公式アカウントの標準機能だけでAI自動返信はできますか?
A. 営業時間外の定型文や、キーワードに反応する決まった返信なら標準機能で作れます。届いた文章の内容を読んで分類・下書きをさせたい場合は、Messaging APIで生成AIとつなぐか、AI機能のある連携ツールを使います。機能や料金は変わるため、導入時に最新の案内を確認してください。
Q2. 予約の受付もAIに任せられますか?
A. 受付の返事や、希望日時の聞き取りは任せられます。予約の確定は、予約システムと連携していない限り、人が予約表を確認してから行うのが安全です。AIに空き状況を断定させないことが二重予約を防ぐポイントです。
Q3. 体調の相談が来たらAIはどう返せばよいですか?
A. AIは内容に答えず、「担当者が確認してご連絡します」と受付の返事だけを送り、スタッフに通知します。急な強い痛みやしびれ、発熱などがある場合は、院の返事を待たずに医療機関へ相談するよう案内文に入れておくと安心です。
Q4. 患者さんのLINEの内容をChatGPTなどに貼っても大丈夫ですか?
A. 氏名・連絡先・症状をそのまま一般向けのAIに貼るのは避けてください。症状や病歴は要配慮個人情報にあたります。個人が分からない形に直してから使い、入力データの扱い(学習への利用、保存期間)をサービスごとに確認してください。
Q5. 導入費用はどのくらいかかりますか?
A. 使うツールや、どこまで自動化するかで大きく変わります。PROSTでは料金表ではなく、削減できる労力量にもとづいてお見積もりしています。まずは無料のAI業務診断で、自院のLINE対応のどこが自動化に向いているかを確認するのがおすすめです。
この記事を書いた人
小川 葵(おがわ あおい)
株式会社PROST 代表取締役。株式会社やわらぎ(名古屋・覚王山の整体院)取締役。JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)。整体院の経営に関わりながら、接客分析やLINE返信のAI化を現場で設計・導入している。岐阜市を拠点に、岐阜県・愛知県を中心に全国の事業者のAI導入と社内AI人材育成を支援。
→ 代表紹介:https://prost-ai.com/about
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